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IE4以上をサポートするjQuery0系の開発に注力

jQuery チームによって本日発表された新しい jQuery のロードマップでは、1系(2006~) 及び 2系(2012~)の開発は終了し、0系の開発に注力するという.

初めて耳にする0系だがこれは、jQuery1.0α(2006年6月)の公開以前に開発されていたリリース候補の一つであったそうだ.これを元に、最新のブラウザから ie4 まで、DHTML をサポートする全てのブラウザをサポートするべく開発を進める、としている.このほどはその0系のアルファ版が公開された.

ブラウザ戦争の覇者 ie4 のサポート

jQuery が公開された2006年と言えば、ie6(2001年8月27日) のリリースから5年が経過し、10月には ie7 の公開を控えている.すでに ie4(1997年9月30日)のブラウザシェアはごくわずかだった.

この時期に W3C DOM (ie は 5 以降で対応)をサポートしない ie4 のサポートに取り組んでいたというのは妙な話に聞こえるかもしれない.

これに対する jQuery チームの答えは次のようなものだ.

Windows Mobile 5.0 (2005年8月23日発表) のデフォルトブラウザ、 Mobile IE は ie4 をベースとしていた.

当時 Web 開発者の間では、Microsoft は独自 DOM への野心を捨てきれずモバイルブラウザで巻き返しをはかっているのではないか、と囁かれていた.

このような認識から、リリース候補の中には、ie4 以上で動作するものがあったという.ところで、Windows Mobile 5.0 端末といえば、日本では WILLCOM W-ZERO3 (2005年12月)が有名だ.

しかし、今日のような満足な開発環境の揃わない中では(初期の開発はメモ帳で行われていたという)、IE4 への対応は困難を極めた.

結局 jQuery 1.0 は、IE5.5 対応としてリリースされた(2006年6月).そして 1.3 以降は ie6 の以上対応となる.

通常の Web 開発では、テストや開発の工数が膨れ上がるのを避けるため、ブラウザシェア等を判断材料に対応ブラウザを選定するのが一般的だ.

しかし、現在のように開発・テスト環境が充実し、ベストプラクティスやライブラリ・フレームワークが流通するようになると、Web 開発にかかるコストは劇的に下がっていると jQuery チームはいう.

そしてこの機に対応ブラウザを、DHTML をサポートする全ての Web ブラウザに拡大したい、としている.

グレイスフルデグラデーションの崖

この数ヶ月間の jQuery チームは、jQuery が基本ライブラリのデファクト・スタンダードになったことで、jQuery の対応ブラウザか否かで、UX(ユーザーエクスペリエンス)に大きな落差が出来てしまう、という問題に注目してきた.

図・グレイスフルデグラデーションに沿ってブラウザの機能に応じて段階的にインタラクションを減らしていくが、jQuery の対応ブラウザから外れると、突然にグラデーションが途切れて UX が落ち込んでしまう.

jQuery から見放されたブラウザは web コンテンツへのアクセスが途端に限定される.

とくに、新しいブラウザが提供されない型遅れのモバイル端末などでは、新たな OS のインストールも難しいため、ついに Web サービスの利用に支障をきたすと端末は価値を大きく損なってしまう.

web サイトが0系を使って構築されれば、このような事態は起こらない、としている.

最新ブラウザのユーザにも恩恵

とはいえ、ie4 のようなブラウザシェアの極端に落ち込んだ環境をサポートするコストによって、jQuery のイノベーションは減速し、結果、大多数の最新ブラウザのユーザは割りを喰うことにならないか?

このような質問に対して jQuery チームは、現在のあなたはたまたま最新のブラウザを使う恩恵に与れているだけで、未来に渡ってそうであり続ける、などとは思わないことだ、と前置きした上で、

ie4 のサポートは W3C DOM 以降のモダンブラウザを使うユーザーにも恩恵はある、という.

具体的には、ie4 の独自 DOM に対応するため DOM 抽象化レイヤーや、かねてから研究していた DOM 操作の非同期化を導入したが、コードが整理され全般的なパフォーマンスも向上する見込み、ということだった.

さらに将来にわたって、バグやその他の理由で非標準準拠な挙動をするブラウザが現れても、DOM 抽象化レイヤーで吸収していく基盤ができた、という.

また、DOM をサポートしながらも、jQuery が動作せず恩恵を受けられなかったブラウザ、これらにもサポートを広げていくそうだ.(IE5.x 相当の IE for CE や NetFront 3.4 以降などがそれにあたる.)

セキュリティに関して

ところで、古いブラウザをサポートし続けることで、ユーザーがセキュリティリスクの高まってしまったブラウザを使い続けることを間接的に後押ししてしまわないか、という意見があるかもしれない.

最後にこの点に関する JQuery チームの見解を紹介しよう.

セキュリティに関して js ライブラリ開発者の立場から言えることは限られる.個人的には、ネットサーフィンにはウィルスの出回っていない Windows CE の IE for CE を使うのが今のところ最も安全に思う.

最近の製品では Windows CE 6(ブラウザは IE6 相当)搭載のネットブック AKRT シリーズ (パチンコ屋の景品交換で手に入るようだ)は、XP サポート終了後のパソコンとしてお勧めだそうだ.

デファクト・スタンダードである jQuery が0系に置き換わっていけば、間もなくこれに、SigmarionII(H/PC2000, Windows CE 3, IE for CE は ie4sp2 ベース) や SigmarionIII(Windows CE 4, IE for CE は ie5.5 ベース)、モバイルギア MC-R450(同CE3)、MC-R550(同CE3) などが加わるだろう.

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